2024-07-19

伝統を復活させた令和の二刀流とは 〜後編〜

上諏訪芸妓 美代遥さん

 東京の大学に通いながら授業のない日に諏訪のお座敷にあがる忙しい日々を過ごしている美代遥さん。上諏訪芸妓の長い歴史の中で初の試みでもあるこの「二刀流」。きっといろんな意見があったと容易に推察できますが、令和の二刀流をもって上諏訪芸妓の伝統を見事復活させた美代遥さんに心からの賛美を贈りたいものです。


 前編はこちら


 中学生の頃、テレビの時代劇を観て引きずりの着物に憧れを持ったのがきっかけでした。高校に進学後もまだ夢は変わらずおりましたので、芸妓さんになるにはどうしようかなと考えて。

 当時、唯一の芸妓でいらした千代丸姉さんが、長唄三味線の杵屋新右衛門先生をご紹介くださったおかげで、日本舞踊に加えて、お三味線のお稽古もはじめることができました。高校生の時分より諏訪大手見番でお稽古を重ねていく中で、自然に「あ、私はここで芸妓になるんだな。」と感じるようになっていましたね。

 時代の流れには抗えず、一度は途絶えてしまった上諏訪芸妓。美代遥さんが御披露目されたことで数年ぶりに復活したとお聞きしましたが、御披露目まではどのような道のりだったのでしょうか?

 踊りと長唄三味線のお稽古を続けてまいりました。教養程度にお茶もお勉強させていただきました。お姉さんが誰もいないというのが一番大変でしたね。わからないことがあれば、見番の理事長を頼りに、一から揚屋さんとの繋がりを作るべくご挨拶周りをしました。

 今年の3月1日に御披露目させていただきました。商工会議所さんをはじめ、観光組合さんや揚屋さんへご挨拶に周りました。夜は何組かのお客様が駆けつけてくださいました。市長の元にも表敬訪問に伺わせていただき、激励のお言葉も頂戴いたしました。

 芸妓の魅力は、普段はお会いできないような方にお会いして貴重なお話を伺えること。また、なんといっても、日本の伝統芸能を守り繋いでいくことに微力ながら協力できているということです。誰かが守ろうとしないと消えてしまうものは多くあります。諏訪の花柳界はそのいい一例ですが、誰かが繋いでいかなければ消えてしまう美しいものを、後世に伝えられる。これが芸妓の一番の魅力だと思います。

 まずは、大学を卒業するまではこの “二刀流” の生活を続けていこうと思っております。卒業後は、置屋さんの機能を整えて芸妓さんになりたい人を迎え入れることができる環境を整えていきたいと思っております。

 将来は、上諏訪芸妓が諏訪の観光資源の一つとなって、私をこれまで育ててくれた諏訪に恩返しできるような存在になれたらいいなと思っております。みなさま、諏訪へおいでなして!


 大きな時代の転換点において、伝統を継承しつつもしなやかに立ち回る凛とした姿勢に心から感銘を受けました。美代遥さんの活動によって上諏訪芸妓の伝統が受け継がれたことが何よりも素晴らしいと感じます。

 美代遥さんをお座敷に呼ぶには、諏訪の旅館に連絡するのが一番よいとのこと。宿泊せず、お食事だけの利用もできるそうです。また、今回の撮影時のように白粉を塗らない「そんなり姿」で呼ぶことも可能とのこと。ご希望を伝えてみてはいかがでしょうか。 

 今回、撮影の機会をいただけたこと、大変光栄でございました。美代遥さんの今後の活動から目が話せません。

美代遥さん kamisuwageigi__miyoharu


※写真はすべてTADEAIが撮影。
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