上村松園の美人画にみる「美人の要」とは

女性の美に対する理想やあこがれを描き出したい
気づけば今日は重陽のお節句ですね。いかがおすごしでしょうか。年々、夏の暑さが厳しさを増しますが、あの手この手で何とかやりすごしております。今年の夏は、いくつかの美術館や展覧会に出かけました。適切に温度管理された空間の中で美術・芸術に触れるのは、それだけで心地の良いものです。
私のハイライトは、山種美術館で開催されておりました上村松園の特別展でしょうか。今年は生誕150年記念ということで、春には大阪中之島美術館でも大々的にやっておりましたね。

着物は明確な季節を内包しているが故に、背景に何も描かれていなかったとしても、どんな季節なのかを想像することができます。松園の写実に裏付けられた着物や髪飾りの丁寧な描写に、思わず見入ってしまいます。素材、地紋、刺繍や染め、重ね色目、織り模様、簪…数えればきりがありません。また、髷によって人物像や年齢も読み取れると説明にあり、大変学びがありました。上品で清楚な松園の絵は、観ているこちらの心まで清らかになるような気がいたします。

個人的な松園のもう一つの見どころは、表具にあると思います。ここにも松園の並々ならぬこだわりが見て取れます。中には大変高価な裂を使っている絵もあるとか。表具を含めた掛け軸にこそ、松園の美意識が結集されているように感じました。
特別展の小さな図版を購入したのですが、表具は含まれておらず…大変残念です。

松園は、「美人画を描く上でも、いちばんむつかしいのはこの眉であろう。」と述べています(註)。表情の要、美人の要が眉ということなのでしょう。初期と後期の作品において、眉の表現がわずかに変化していることに気が付きます。
眉の形はファッションと同様に時代によって変化しますが、松園の描く眉に関しては普遍的な美しさを感じます。

女性の内面から溢れる清らかな品を感じさせる松園の絵は、まさに「女性の美に対する理想」です。
(註)上村松園『上村松園全随筆集 青眉抄・青眉抄その後』求龍堂、2010年。
※掲載の上村松園の絵画作品は、日本においてパブリックドメインの状態にあります。特別展にて展示されていない作品も含まれております。著作権フリーの絵画作品を掲載させていただきました。
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